楽曲レビュー

2019年最強のアニソン原曲 女王蜂「火炎」なのではないか説

どうも、アヘバス管理人です。

アマゾンプライムに加入しているお陰もあり、今年は結構アニメをたくさん見れました。

旧作から新作まで月に平均して4~5本は消化していたので、2019年アニメは結構見たんじゃないかなぁと言う印象です。

さて、今回はそんな事もありつつ、表題通り2019年最強のアニソンはこれ

どろろ 前期OP 女王蜂「火炎」

この曲だったんじゃないかと言う話

最強ってなんだよ

異論というか、DJによって違うと思うので、「最強」なんてデッカイ主語なんだ!アヘバスというブログはなんてけしからん!!という反応した読者は残念ながら思うツボです。武器を捨てて国に帰りなさい。

セールスで言えばLiSA「紅蓮華」が最強だっただろうし、もっとネームバリューや編曲、作曲の「金がかかっている度合い」で言えば鈴木雅之「ラブ・ドラマティック」、Mrs,Green Apple「インフェルノ」、作品全体を通して、BGM、OPEDのイメージがよくまとまっていた「Dr.Stone」もとてもカッコよかったわけで、最強なんて言うと語弊があるわけです。

ここで言う最強というのは私個人のDJをする上でとても使い勝手の良く、下手をすれば何でもかんでも「火炎」を突っ込みかねない程、素晴らしい音楽だったということです。

私自身は過去のポストからも分かると思いますがアニソンRemixをメインフィールドに据えたDJです。作品の文脈よりも音楽的な要素からフロアへの最適解を導く、みたいなことに楽しさを見出しているネットリしたタイプのキモオタと思っていただいて差し支えありません。

従って、今回はどろろのここのシーンが良かった!みたいな話ではなく、こちら

「アニソンRemixとアニソン原曲を橋渡しする攻めの要」

という観点から「火炎」がアニソン原曲シーンに於いてエポックメイキング的な立場を担っている事を語っていきたいと思います。

ミクスチャーロックの新たな到達点

各種文献で言われているように「女王蜂」はロックをやっていると思っていないようなので、最初に断っておくと、私が「火炎」の音楽的な特徴から今までのジャンルに当てはめるのであれば、恐らくこうじゃないか、ということで「ミクスチャーロック」と定義をさせていただきます。

ミクスチャーとはあるジャンルとロックをかけ合わせて作られたジャンルで、バンド編成を基本としていながらも、文化的にロックの素養以外のものも流入しているロックのことです。

代表的なアーティストに最近ジョン・フルシアンテがカムバックしたということで大きな話題になった「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」

アニソンの人達にわかりやすいところだと、「MAN WITH A MISSION」

とまぁこんな感じです。

あるジャンルなんて言いましたが、ヒップホップ要素とロックが合わさると基本的にミクスチャーなんて言われています。

さて、一方で「火炎」ですね。判別不可能なほど色々なジャンルの要素が密接に絡み合っており、特筆して攻めているなという印象を持つ点は2箇所

  • Juke Footwork系のリズムをサビの部分に充てている上、インストのみ
  • ポップスの進行、Aメロ、Bメロ、サビではなく、ブレイク、ビルドアップ、ドロップというクラブミュージックの進行を採用している

この2点はセールス至上主義の音楽市場において中々採用が難しい攻めたポイントだと思います。

Juke Footwork系のリズムをサビの部分に充てている上、インストのみ

さて、便宜上「サビ」という表記をいたしますが、そもそもインストだけなのでサビではないです。

juke/footworkとはシカゴ・ハウスとマイアミ・ハウスをかけ合わせたジャンル、「ゲットーハウス」を更に高速化させたジャンルです。

Juke/footworkと並列して記載していますが、大本はゲットーハウスに当たります。UKダブステップ、ブロステップの関係と相似しており、アメリカでブイブイ言わせているお下品な方がjuke、ヨーロッパ的なハイソでお上品な呼び方がfootworkです。

この辺りの考察は日本のJuke/footworkのパイオニア、DJ Fulltono氏が考察を書いているので、シカゴに思いを馳せたい諸兄等は参考にして下さい。

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/6627

話をもとに戻すとこの「火炎」、高速で足を動かしたくなるようなリズム――キックとクリックの音にギター・ソロが入ってくるという実質「アニソンRemix」のような構成がサビにあたる部分に入って来ています。

ここで論点に現れてくるのが、「シンガロング」できないアニソンがアニクラでヒットを打つ要になるのかどうかということです。

アニクラの魅力の1つとして挙げられるものに「シンガロング」は間違いなく入ってくると思います。しかしながら「シンガロング」するためには歌の歌詞を覚えていなければならない。だから、知っている曲以外で、ましてや即興でダンスさせるなんて言うのは身体動作が苦手なオタク的にはNGなわけですよ。だから、アニソン以外のものをかけることに反発を覚えたりするわけです。

でも、火炎は「シンガロング」という壁を取り払ってしまっているわけです。言い訳をさせずに踊らせる、飛ばせるそういう魅力がこの曲に含まれているから強い。

ポップスの進行、Aメロ、Bメロ、サビではなく、ブレイク、ビルドアップ、ドロップというクラブミュージックの進行を採用している

前半の入りが和笛のポン出し一発、アブちゃんのボーカルに段々とビートが入ってきて、「壊しちゃおうぜ Yeah」でドッカーン!と音量がマックスになるというEDMやFuture Bassという書き方をされるのも納得な構成。

と、言うことで完全に違う国から来てる印象ですね。アニリミを専門にDJをしてきた人は特になんとも思わないかもしれませんが、この構成を採用してメジャーシーンで流通させた、特に音楽をディグしたりしない一般のクラスタにも通じるレベルで落とし込んでいるというのはセンスが爆発しすぎています。

女王蜂というバンドがいかに型破りであるか、という象徴だと思います。

過去に例がないわけではない

さて、型破りだ!と言いつつも独創的とは言い難いからヒットがあるんじゃないかという話をこれからしていきます。

独創的ではないとはどういうことかと言うと要するに前例があってこの「火炎」なわけです。この最強説は個人的には下地が慣らされていたからできたものだろうと思うわけです。

例えばJuke/footworkのリズムを使うことであれば「恋」「SUN」等の大ヒットで知られる国民的人気アーティストの星野源。

昨年リリースされた「POP Virus」収録、元々配信限定シングルの「アイデア」は各音楽雑誌でもその手法が絶賛された事を記憶している方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

ビートメイカーのSTUTS(スタッツ)が参加したことで話題になり、尊敬する音楽ライターさんのimdkm氏も下記のようなブログを残しています。

また、攻めている楽曲構成に関しても2014年サッカーW杯 ブラジル大会のテーマソング、椎名林檎「NIPPON」も洋楽的な構成をしている事で中々受け入れらるには難しかったのではないかという考察がbassment times 石左氏もなされています。

https://basement-times.com/post-2705/

完全に私個人の主観でしかないわけですが。

歌詞の独創的な読みや世界観から作家性が強く出ているようで、事実としては滅茶苦茶大衆的(音楽テーマとして、昭和モダン、ジャズ、キャバレー音楽がある以上大衆的だと思うんですが)な椎名林檎先生が、2014年にこの曲を出したことで「右翼的」「軍国主義的だ」なんてナンセンスな批判を受けたのは逆に言えば、楽曲的に受け入れられることが難しかったからではないかと思わざるを得ないのです。私は「NIPPON」という曲は好きですが、多分、丸サレベルの神曲だったら誰もあんな変なことは言っていなかったと思います。

まぁ、そんなこんなもあって「火炎」が提示した可能性というのは前段で申し上げたとおり、J-pop市場で見るともう誰かがやっている事なので、「音楽的にエポックメイキングな作品である」と言う判断は難しいです。

アニソン原曲の中でこの属性を得たのが火炎の強い所

最初の話に戻りますが、じゃあ何で独創的ではない「火炎」が最強なのかというと、アニソンというフォーマットで出てくれた事で、この構成(洋楽的な、クラブミュージック的なアプローチ)もまた1つのスタンダードであるという認識を確立させた事がエポックメイキングだと考えます。

今までもそうですが、アニソンタイアップでダンスロックやデジタルビートを使っているバンド勿論いました。今年の作品だと炎炎ノ消防隊 OP「インフェルノ」も面白かったですが、じゃあなんで生バンド編成なのに2番で急に打ち込みっぽい音になったの?って疑問が鎌首をもたげてくるわけですよ。

憶測でしかありませんが、アニソン自体が売れ線のJPOPの後追いと言うか、前例主義的な側面は少なからずあるので、恐らく、競合他社の研究の結果、こういう方向性に言ったのではないかと思うわけです。

そういう意味では先行アドバンテージを振りに行った女王蜂の先見の明、というか信じたサウンドをぶつけていく姿勢って熱いものを感じます。

まぁ、これ全部私の妄想なんですけど。

あと、アニクラはアニソンの中でかるた取りをするゲームなので、いくらリズムや楽曲構成の観点から革新的で面白いからといって前述したような「アイデア」や「NIPPON」をアニクラでかけても、共感作用―俗に言う「優勝」は狙えないでしょう。

でも、「火炎」なら和楽器要素、フットワークのリズム、カットインでいきなり始まる、アニクラ特有の文脈つなぎ全てに対応した上で、違和感なくRemixにつなげていくことができるというアニソンDJ的には超美味しい楽曲です。

アクセントと言うか、スパイスというか適切に振っていくことでとてもおもしろい反応が見られるモノにしがいのある楽曲だと強く感じます。

そんなわけで「火炎」が最強じゃなかったら一体何が強いっていうんですか、というのが今回のお話でした。

おわりに アニソンは様々な形態を受容する度量をもっている

と、言うわけで火炎が最強という理由について語らせていただいた次第ですが、変わった曲がウケているという点では実は結構前から存在しています。

地獄先生ぬ~べ~OP 「バリバリ最強No.1」これなんか最たる例だと思います。

筋肉がすげぇ

ハードプログレという前衛的なジャンルに属する…と言ってもそもそもジャンル分けが意味を成さないほど前衛的なので、プログレなんて言い方されるのですが、未だにカラオケで歌われているし、各種原曲パーティーでもよくスピンされているアンセムなんですよね。

一般受けは難しそうなハードでゴリゴリな曲を第九の旋律に乗せていますが、それでもアンセムと言うことで幅広い世代から認知されているわけでアニソンの特異性というか、音楽的にマニアックでも成功するものは成功するという1つの証明だと思います。

先程もかるた取り、なんて言い方をしたわけですが、フロアが求めているものに答えるかるた取りのようなDJは面白さが分かりやすく評価もされやすいです。

しかしながら、アニソン自体が他ジャンルの輸入、輸出で成功しているというタグである関係上、もっと多様な評価軸、もとい楽しみ方があってもいいんじゃないのかと思うわけでした。これからもたくさん面白い曲が聞けることを楽しみにしつつ、以上で締めたいと思います。

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